命と向きあう
腎不全の夫は透析を回避する方法を模索していた。透析はあまりにも心身の負担が大きいからである。近所の病院の若い主治医は血圧の管理や貧血の防止等、いくつかの治療をしようとしたが、我々を納得させる説得力がなかった。彼の処方する薬にも納得がいかず拒否するようになった。それには理由があった。
数年前、夫は痒みに耐え切れず近所の病院の皮膚科を受診した。内服薬も塗り薬もまったく効かず、症状はむしろ悪化したが、医師は薬の量を増やすだけだった。次第に体力がなくなり、終いには尿が出なくなった。薬をやめ玄米菜食療法に切り替えたところ、痒みは少し収まり、体力も回復した。今になって思えば、その痒みは腎不全からくるものだったのに、医師は内臓の検査もせず闇雲に強い薬を処方し続けたのである。このことがあって、この病院の医師が出す薬には用心するようになった。田舎では病院の選択肢がほとんどなく、腎不全の治療も同じ病院で受けるしかない。主治医が出した降圧剤は副作用がひどく、服用すると無気力になって1日中寝ているような状態になり頭も働かなくなった。
また、腎不全期の治療で一番問題になるのは食事療法である。主治医には栄養学の知識がなかった。栄養士の指導も受けたが、到底納得のいくものではなかった。食事の管理はやっていたが、今一つ自信がなく、腎不全はゆっくりとだが、確実に進行していった。
去年の8月、漢方で腎不全の治療をする京都市の高雄病院院長江部洋一郎医師を知った。漢方の考え方を基に、現代中国医学の薬である中医薬も活用する独特の処方を行っている。透析の導入を遅らせることができるし、透析を離脱できる可能性もある、という。
すぐに診察を受けた。処方された漢方でクレアチニン値がぐんと下がり、全身状態もよくなった。しかし、血圧は高いままである。高雄病院は川風市からかなり遠く、頻繁には通えない。血圧の調整は近所の病院でやるよう指示された。地元の病院の主治医が出す薬をこわごわ飲み始めたが、血圧は下がらなかった。
そんなときに出会ったのが、保存期腎不全療法に関する本である。さっそく、著者である
T医師を訪ね、診断を受けた。T医師は断言する。「透析は人間の尊厳を傷つける。自分が透析をやったこともないのに、透析をすれば楽になりますよ、などと簡単に言う医師に怒りを感じる。慢性腎不全の治療が限界になり、透析を受けることになった人たちの中に『透析になってよかった』という人はいない」。
T医師は慢性腎不全を進行させる因子を徹底的に突き止め、取り除くことで腎不全の進行を止める医療を編み出した。この治療は患者の自覚がなければ成り立たない、医師と患者の合意の下に行われる治療である。T医師に徹底的に学んだ栄養士の指導は完全に納得のいくものだった。この病院にはこのような栄養士が6人もいるという。1日蓄尿という方法で塩分や蛋白質の摂取量を医療的に突き止められたこともあり、食事管理に自信を持てるようになった。
12月、高雄病院で診察を受けた帰りのバス停で腎硬化症で江部医師の治療を受けている男性に出会った。バス停は情報交換の場である。夫と同年齢のその男性は東北大学の心臓外科の清水先生の漢方治療を受けていた。2年前に先生がなくなり、漢方の服用をやめたところ、クレアチニン値が上がった。日本で唯一クレアチニン値を下げられる医師として江部医師を紹介され、治療を受け始めたところ、クレアチニン値が下がったという。血圧や尿酸値は近所の病院で調整し、札幌から1ヵ月半に1度通ってきている。透析になったら、腎移植を受けるつもりだが、日本では70歳以上は無理なので、大阪の斡旋組織を通して800万円で中国の死刑囚から腎臓を買うという。「生きのいい腎臓が手に入るんですよ」と刺身でも食べるように目を輝かせた。
江部医師は現代医学はもちろん、他のさまざまな代替療法や心理学まで勉強されたという。漢方治療は証で見るので、腎不全以外の様々な病気も診ておられる。
江部医師もT医師も患者の痛みに深く寄り添われる。T医師は年金でできる治療にしたいと言われる。江部医師の処方される漢方はすべて自己負担でも2万円あまりである。
我々は漢方薬を服用しながら、保存療法を受けることにした。
自己顕示欲がなく、金にも執着がない夫は必要以上に働かない。好奇心が強く、何にでも首を突っ込み、自分の世界を広げてはいくが、それを形にする時間を作ろうとはしなかった。将棋にのめりこんでいて、かなりの時間を割いていた。しかし、田舎の将棋の練習場や大会会場はいまだに禁煙ではない。冬は暖房もあまり効いていなし、風邪をひいている人もいる。夏の冷房も体に堪える。風邪と煙草と寒さは腎不全の大きな進行因子なので、家にいるのが一番安全である。行動が制限されるようになったことで、仕事をする時間が増えた。自分の命と向き合うという、新たな世界も開けた。これまで蓄えてきたものが1つ1つ形になっていくのを見るのは楽しみである。


風子さんの云わんとするところはよく分かる。全く承知できないことが山積している。
数日前の朝日新聞に小林製薬のサプリメント記事があった。一面すべてを使い18種類の野菜を凝縮したという野菜粒の広告である。
「ケールや大麦若葉、ニンジン、タマネギ、カボチャなど18種類の野菜を凝縮し、現代人の栄養バランスを応援します」
化学専門の理学博士の眼で、全面を調べるがウソは皆無だ。一番下の段に、小さい文字で成分の一覧表がある。たしかに野菜は18種類ある。ただ、その各々の量が20ミリグラム平均である。20×18=360ミリグラム、0.35グラムなので1グラムの三分の一という僅かな量だ。これを一日5粒飲む。
これで野菜を食べる代用に幾分でもなるのだろうか。ニンジンを干し、20ミリグラム食べても何の価値もあるまい。
ブロッコリ一塊たべれば150グラム、二万の化学物質がある。これを噛み、唾液と混ぜて食べる。美味しい甘み。脳を刺激する。
知らない人はこれを5粒飲めば、ずいぶん野菜の中の栄養が補充されると思うだろう。とんでもない。
人間に必要な食べ物・栄養。人間が学んで知っていることは、ほんの僅かである。1%も知っていないだろう。
また、昨日だったが、群馬の赤城の南面の村をNHKが朝のニュースの時間に紹介していた。水を強い磁界に通すと、水分子が結合する。これをペットに飲ませるといい。犬が飲んでいるシーンがあった。1.8リットルが500円で販売するという。
とんでもない。水を強力な磁場を通すと、たしかに結合する。しかし、この水が何かに効くという、科学的な研究はまだない。
私の家ではサプリメントを買ったことはない。
とにかく、ウソは書かないけれど儲けたい。こんな広告が毎日眼につく。
投稿: ミネさん | 2008年2月 9日 (土) 23時00分