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2009年4月

2009年4月 7日 (火)

逃げおおせた

 「もう泥棒はいないよ」と風呂の更衣室で誰かが言っている。フロントに事情を聞いてみた。泥棒は3月いっぱいでジムを止めたという。 

 前にこのブログに書いたジムの泥棒が夜だけジムが使えるナイト会員から1日ジムを使える正会員に戻ってきた。正体がばれていないと思っている泥棒は以前同様愛想良く話しかけてくる。顔を合わせるたびに緊張が走った。再び盗難が相次ぐようになった。泥棒の存在を知らない新会員が狙われた。泥棒の正体を知っている会員たちは「今は木の芽時だから、活動が一層激しくなったんじゃない」と言っている。証拠がないから誰も名指しできない。私もカモになりかけている人を見て、「気をつけなさいよ」と喉元まで出掛かるのをぐっとこらえるしかなかった。
 
 たまりかねたジムは女性の更衣室や風呂場に張り紙をした。「盗難が相次いでいます。盗難にあわれた方は小額でもフロントにお届けください。何か情報がありましたら、どんなことでもお知らせください。私たちもスタッフも厳しく対処していくつもりです」とある。同時に泥棒がチエックインするとスタッフが張り付くようにもなった。とたんに泥棒はジムに来なくなり、とうとう止めた。夫も同時に止めた。夫婦共々正体がばれたと気づいたのだろう。夫は小学校の教頭である。古くからの会員たちは家族全部が彼女の盗癖を知っているはずだという。止めさせる手立てを取らなかった家族も共犯ではないのか。
彼女は10年間十分に稼いでうまく逃げおおせた。

 ジムは会員たちが互いに疑心暗鬼の状態になるのを避けたいと泥棒がいることを公表しなかった。泥棒は高を括ってしまった。泥棒とその家族に良心があるとは思えない。被害が広がり続けたのはそのためである。
 小泉改革を発端にアメリカ型社会になった日本には彼女のような人たちが増え始めた。ジムのスタッフが今回取ったような方法で厳しく対処していくしかない。

2009年4月 4日 (土)

生涯現役

 ココ・シャネルは80歳になっても街で若い男に「お嬢さん、お茶をご一緒しませんか」と声をかけられたと言う。川風市にもシャネルのような女性がいる。朗々とした豊かな声、ミニスカートにハイヒール、颯爽と歩く細く強靭でしなやかな体。ジムでヨガを教えている彼女は四月に還暦になる私より年上である。
 半年前このブログにも書いたように、翻訳家の夫のもとで2年前、ゼロから英語の勉強を始めた私の体はその過酷さに音を上げた。頭と目の疲れは1晩寝たぐらいでは回復しない。寝つきが悪くなった上に1時間半の睡眠サイクルごとに目が覚めるようになった。眠りの質が極端に落ちたのだ。パソコンに向かい、辞書を舐めるように読み込んでいくと尻が痛くなってきて、椅子に座っていられなくなる。
 勉強を続けるには体を鍛えなければならない。ジムで空いた時間に彼女のヨガに出てみた。彼女の一言一言に目から鱗が落ち、腑に落ちていった。
 私は反身だと指摘され、注意されていたが、なぜ反身が悪いのか、どうしたら直るのかわからなかった。彼女は私の肩に手を添え、いとも簡単に胸を開かせてくださった。胸も開かずに体だけを反らしていたから反身になったのだとようやく気づいた。「胸を開けば骨盤は締まります」「はらが据わっていれば何事にも動じなくなりますよ」。胸を開いて臍下丹田に力を込めるということだ。頭ではわかっているのに、体では何もわかっていなかった。私は家事が好きで掃除も草むしりも一生懸命やるのだが、それぐらいでは追いつかないほど体は退化している。車と電化製品に囲まれた現代に踏ん張るシーンはほとんどない。きちんとした姿勢で椅子に座り続けられなかったのもそのせいだった。
 私以上に衰えている夫の体も彼女の骨盤矯正を受けるとぐっすり眠れて楽になる。こんな技術を惜しげもなく教えていただけるなんて。
 彼女はたくさんの受講者の一人一人の問題点を即座に捉え、手を添えて矯正していく。「あなたは先週よりここが縮んでいますよ」と後ろにいる受講者に話しているのが聞こえた。こんなにたくさんいるのに一人一人の先週の状態まで正確に把握していらっしゃるなんて。
 ユーモアたっぷりで溌剌とした彼女の授業を受けるたび幸せな気持ちになる。感謝の思いを伝えると「喜んでいただけて感謝しています。一緒に生涯現役ね」と花のような笑顔を贈ってくださる。

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